うつ病で退職してしばらく経つ。傷病手当金も終わりが見えてきて、次の収入源がわからない。「障害年金って、うつ病でも申請できるの?」——その疑問に、この記事で答える。受給条件、金額の目安、傷病手当金との併給調整まで、まとめた。
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障害年金とは──精神疾患でも対象になる公的年金
障害年金は、病気やケガによって生活や仕事に支障が出ている人に支給される公的年金制度。「障害」という名前から身体障害を連想しがちだが、うつ病・適応障害・双極性障害・統合失調症といった精神疾患も対象になる。
年金には2種類ある。
障害基礎年金は、国民年金の加入期間中に初診日がある場合に支給される。等級は1級と2級。自営業・フリーランス・学生のときに初めて受診した人が該当する。
障害厚生年金は、厚生年金の加入期間中に初診日がある場合に支給される。等級は1級・2級・3級。会社員や公務員として働いていた時期に初めてうつ病で受診した人は、こちらの対象になる。
障害厚生年金は障害基礎年金に上乗せされる形で支給されるため、金額に大きな差が出る。どちらに該当するかは「初診日にどの年金に加入していたか」で決まる。あとから変更はできない。
支給期間に上限はない。認定を受ければ、障害の状態が続く限り受給できる。傷病手当金の最長1年6ヶ月とは、ここが決定的に違う。ただし、精神疾患の場合は「有期認定」となることが多く、1〜5年ごとに診断書を提出して更新の審査を受ける必要がある。
うつ病で障害年金を受給するための3つの条件
受給には、以下の3つをすべて満たす必要がある。
① 初診日要件
うつ病で初めて医師の診察を受けた日(初診日)に、国民年金または厚生年金の被保険者であったこと。10年前に一度だけ受診していた場合、その日が初診日になる。「いつ初めて受診したか」の証明が必要なので、過去の受診歴がある人はカルテの保存期間(原則5年)に注意したい。
② 保険料納付要件
初診日の前日時点で、次のいずれかを満たすこと。
・初診日の属する月の前々月までの公的年金加入期間のうち、保険料納付済期間+免除期間が3分の2以上
・初診日の属する月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと(特例)
会社員として厚生年金を払っていた期間があれば、多くの場合クリアできる条件ではある。
③ 障害認定日に等級に該当すること
初診日から1年6ヶ月経過した日(障害認定日)時点で、障害等級に該当する状態であること。障害認定日を過ぎていても、現在の状態で等級に該当すれば「事後重症請求」として申請できる。
精神障害で障害年金2級に認定される基準を噛み砕くと、「日常生活に著しい制限があり、援助が必要な状態」。厚生労働省の「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」では、以下のような日常生活の能力が審査される。
・食事——自発的にできるか、声かけや準備の援助が必要か
・清潔保持——入浴や着替えを一人でできるか
・対人関係——他人とのコミュニケーションにどの程度支障があるか
・安全保持——危険を回避し、自分の健康を管理できるか
・外出——一人で外出できるか、付き添いが必要か
「まったく動けない」状態でなくても認定される。日によって波があっても、全体として日常生活に著しい支障があれば2級に該当する可能性はある。逆に、「一人暮らしで家事も外出もなんとかできている」場合は3級止まり、あるいは不該当になることもある。
金額の目安──障害基礎年金と障害厚生年金のシミュレーション
まず、障害基礎年金の金額は等級で一律に決まる(2024年度基準)。
| 等級 | 年額 | 月額の目安 |
|---|---|---|
| 2級 | 81万6,000円 | 約6万8,000円 |
| 1級 | 102万円 | 約8万5,000円 |
障害厚生年金は、現役時代の平均月収(平均標準報酬額)と加入期間で変わる。以下は障害厚生年金2級の場合のシミュレーション(加入期間15年、最低保障300月で計算)。
| 平均月収 | 報酬比例部分(年) | +障害基礎年金(年) | 合計(年) | 月額の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 20万円 | 約32万9,000円 | 81万6,000円 | 約114万5,000円 | 約9万5,000円 |
| 30万円 | 約49万3,000円 | 81万6,000円 | 約130万9,000円 | 約10万9,000円 |
| 40万円 | 約65万8,000円 | 81万6,000円 | 約147万4,000円 | 約12万3,000円 |
※障害厚生年金3級は報酬比例部分のみ(最低保障:年61万2,000円、月約5万1,000円)。障害基礎年金は加算されない。
これに加え、加算がある。障害基礎年金2級以上の受給者に、生計を維持する子がいる場合は子の加算(第1子・第2子は各年約23万4,800円、第3子以降は各年約7万8,300円)。障害厚生年金2級以上の受給者に、65歳未満の配偶者がいる場合は配偶者加給年金(年約23万4,800円)が加わる。
たとえば、平均月収30万円・配偶者あり・子2人の場合、合計で年約200万円超。月額にして約17万円になる。
傷病手当金との併給調整
傷病手当金の受給期間中に障害厚生年金の支給が始まった場合、両方を満額受け取ることはできない。障害年金の日額(年額÷360)と傷病手当金の日額を比較し、以下のルールで調整される。
・障害年金の日額 ≧ 傷病手当金の日額 → 傷病手当金は全額不支給
・障害年金の日額 < 傷病手当金の日額 → 差額分のみ傷病手当金として支給
計算例(月給30万円、障害厚生年金2級+基礎年金2級の場合)
・傷病手当金の日額:約6,667円(標準報酬月額の2/3÷30日)
・障害年金の日額:約130万9,000円÷360=約3,636円
・差額:6,667−3,636=約3,031円 → この分が傷病手当金として支給される
つまり、障害年金を受給しても傷病手当金がゼロになるとは限らない。差額分は受け取れる。両制度の関係は傷病手当金と障害年金の違い|併用はできるか解説に詳しくまとめている。
申請前に知っておきたい注意点
初診日の証明が最大の壁になりやすい。初診が10年以上前だとカルテが廃棄されていることがあり、その場合は「受診状況等証明書が添付できない申立書」等で代替する必要がある。転院を繰り返した人は、最初の病院の記録を早めに確認したい。
診断書は「日常生活の困難さ」が伝わる内容でなければ通らない。主治医に現在の生活状況——食事、入浴、外出、対人関係でどこに支障があるか——を具体的に伝えることが重要になる。診察時間が短い場合は、事前にメモを渡すのも手段のひとつ。
審査には3ヶ月前後かかる。年金事務所に書類を提出してから結果通知まで、平均して約3ヶ月。不支給になった場合は審査請求(不服申立て)もできるが、さらに数ヶ月かかる。手続きの全体像を把握してから動いたほうがいい。
次にやること
障害年金の申請手順を具体的に知りたい場合は、障害年金の申請手順|うつ病・適応障害の場合を解説で流れをまとめている。
退職後の生活全体を見直したい場合は、うつ病で退職した後の過ごし方と利用できる制度も参考になる。傷病手当金・自立支援医療・年金免除など、使える制度を一覧で整理した記事になっている。
まずは年金事務所の「ねんきんダイヤル」(0570-05-1165)か、最寄りの年金事務所の窓口に相談するのが最初の一歩。電話が難しければ、自治体の障害年金相談窓口でも対応してもらえる。
まとめ
障害年金は、うつ病でも条件を満たせば申請できる。金額も、加算を含めれば生活を支える現実的な額になる。
私自身、傷病手当金が終わったあと、数字が何もわからないまま不安だった期間が一番きつかった。条件も金額も、調べて輪郭が見えるだけで、頭の中の霧が少し晴れる。この記事がその一歩になればと思う。
※この記事は2026年2月時点の情報に基づく個人の体験・見解であり、法的・医学的アドバイスではありません。
制度の詳細は厚生労働省・協会けんぽ・ハローワークの公式情報をご確認ください。
心身に不調を感じている方は、必ず医療機関にご相談ください。

