退職後の健康保険の切り替え方法。3つの選択肢と手続きを解説

制度解説・基礎知識

退職した翌日から、会社の健康保険は使えなくなる。保険証を返却したあと、「次の保険、どうすればいいんだ」と検索してここにたどり着いた人も多いと思う。選択肢は3つ——任意継続・国民健康保険(国保)・家族の扶養。この記事では、それぞれの条件・手続き期限・保険料の目安をまとめた。

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退職後の健康保険、3つの選択肢

一言で言うと、「退職したら、自分で新しい健康保険を選んで手続きする必要がある」という話になる。

在職中は、会社の健康保険(社会保険)に加入していたはず。保険料は会社と折半で、毎月の給与から天引きされていた。退職すると、この被保険者資格を失う。退職日の翌日から、自分で新しい保険に切り替えなければならない。

手続きしないまま放置するとどうなるか。保険証がない状態で病院を受診すると、窓口で医療費を全額(10割)自己負担することになる。3割負担のつもりで受診したら請求額が3倍以上だった——という話は珍しくない。

切り替え先は以下の3つ。

①任意継続被保険者制度
退職前の健康保険にそのまま残る方法。最長2年間。手続き期限は退職日の翌日から20日以内。保険料は全額自己負担になるが、上限額がある。

②国民健康保険(国保)
市区町村が運営する保険に加入する方法。手続き期限は退職日の翌日から14日以内。前年の所得をもとに保険料が計算される。

③家族の扶養に入る
配偶者や親が会社員・公務員であれば、その健康保険の被扶養者になれる可能性がある。保険料の自己負担はゼロ。ただし年収要件を満たす必要がある。

どれを選ぶかで、保険料は月に数千円〜数万円変わる。「とりあえず国保でいいか」と考える人が多いが、月給によっては任意継続のほうが安いこともある。

各選択肢の加入条件

任意継続の条件

    • 退職日までに継続して2ヶ月以上、その健康保険に加入していたこと
    • 退職日の翌日から20日以内に申請すること(1日でも過ぎると申請不可)
    • 申請先:退職前に加入していた健康保険組合、または協会けんぽの都道府県支部

20日の期限は厳格で、「知らなかった」は通用しない。退職が決まった時点で、カレンダーに期限を書き込んでおくのがいい。

国民健康保険の条件

    • 他の公的医療保険に加入していない人は、原則として全員が加入対象
    • 退職日の翌日から14日以内に、住所地の市区町村役場で届出
    • 持ち物:健康保険の資格喪失証明書、本人確認書類、マイナンバーカード(または通知カード)

資格喪失証明書は、退職後に会社から届く書類。届くまでに1〜2週間かかることもある。届かない場合は会社の人事部に催促するか、最寄りの年金事務所で発行してもらえる。私の場合、届くまで10日かかった。届いたその日に区役所の窓口へ行ったが、手続き自体は15分ほどで終わった。

扶養に入る条件

    • 年収見込みが130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)
    • 扶養者(配偶者・親など)の年収の2分の1未満であること
    • 申請先:扶養者の勤務先を通じて、健康保険組合に届出

ここで注意点がひとつ。退職後に傷病手当金や失業保険(基本手当)を受給している場合、日額が3,612円以上(年収換算130万円÷360日)だと扶養に入れない。受給中は任意継続か国保を選び、受給が終了したタイミングで扶養に切り替える——という二段階の方法もある。

保険料の目安

保険料は選択肢によって大きく変わる。退職前の月給別に、おおよその目安をまとめた。

退職前の月給 任意継続(月額) 国保(月額目安) 扶養
20万円 約20,000円 約12,000〜18,000円 0円
25万円 約25,000円 約16,000〜24,000円 0円
30万円 約30,000円 約22,000〜32,000円 0円
35万円以上 約30,000円(上限) 約28,000〜40,000円 0円

※任意継続の保険料率は都道府県により異なる。上記は協会けんぽの概算。
※国保の保険料は自治体ごとに異なる。上記は東京都23区の目安。

任意継続の保険料は、在職中のおよそ2倍になる。会社が負担していた分がなくなるためだ。ただし、協会けんぽの場合は標準報酬月額30万円が上限。月給35万円以上だった人は、実際の給与より低い金額で計算されるため、国保より安くなるケースが多い。

国保の保険料は前年の所得がベースになる。つまり退職1年目は、在職中のフルの収入で計算されるため高くなりやすい。2年目以降、所得が下がれば保険料も下がる。「1年目だけ任意継続、2年目から国保」という選び方もある。

もうひとつ。扶養に入れるなら保険料はゼロ。年収要件を満たすなら、まず扶養を検討するのが経済的には最も有利な選択になる。

任意継続と国保の金額をもっと詳しく比較したい場合は、任意継続 vs 国保|退職後の健康保険はどちらが安いで年収パターン別のシミュレーションをまとめている。

手続きの注意点

期限は絶対に守る。

任意継続は20日、国保は14日。どちらも退職日の翌日からのカウント。任意継続は期限を1日でも過ぎると申請自体ができなくなる。国保は14日を過ぎても届出は受理されるが、届出が遅れた期間に病院を受診していた場合、医療費が全額自己負担になるリスクがある。

退職日が月末かどうかも確認してほしい。たとえば3月31日退職なら、4月1日から新しい保険に切り替わる。3月30日退職だと、3月31日から資格を失い、3月分の健康保険料の扱いが変わってくる。退職日を1日ずらすだけで保険料が1ヶ月分変わることもあるので、退職前に人事部に確認しておくのがいい。

2022年1月の健康保険法改正で、任意継続は自分の意思で途中脱退できるようになった。以前は原則2年間の縛りがあったが、現在は「まず任意継続を選んで、国保が安くなったら切り替える」という判断もできる。

保険料が高いと感じたら、減免制度の確認も忘れずに。国保は退職理由や所得状況によって減額・免除を受けられる場合がある。国民年金の免除申請と合わせて手続きすると、月の固定支出をかなり抑えられる。詳しくは国保減免・年金免除の条件と手続きを参照。

次のアクション

まずは、自分がどの選択肢に当てはまるかを確認すること。扶養に入れるなら扶養。入れないなら、任意継続と国保の保険料を比較して安いほうを選ぶ。それだけで月に数千円〜数万円の差が出る。

まとめ

退職後の健康保険は、任意継続・国保・扶養の3つから選ぶ。期限は14日か20日。短いようで、退職直後の慌ただしさの中では意外とあっという間に過ぎる。

書類を揃えて、窓口に届ける。やることはそれだけ。ひとつずつ片づけていけば、ちゃんと保険証は届く。

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※この記事は2026年2月時点の情報に基づく個人の体験・見解であり、法的・医学的アドバイスではありません。
制度の詳細は厚生労働省・協会けんぽ・ハローワークの公式情報をご確認ください。
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