退職代行のサイトを何度も開いては閉じている——そんな夜に、この記事を読んでほしい。
退職代行を使う前に、診断書を1枚取っておくだけで、退職後の経済状況が大きく変わります。傷病手当金の受給条件を満たせること、退職の最適順序を確保できること、即日退職の法的根拠が強くなること。この3つを具体的に解説します。
公式LINEでも制度まわりの情報を配信しているので、あわせてどうぞ。
退職代行と診断書——「お金」でつながる関係
退職代行サービスは、本人に代わって会社に退職の意思を伝えてくれるサービスです。費用は弁護士型で5〜10万円、労働組合型で2〜3万円が相場。「もう上司と話したくない」「明日から出社したくない」という状態でも、退職の手続き自体は進められる。
ただし、退職代行の守備範囲は「辞める手続き」まで。退職後のお金の確保——傷病手当金や失業保険の申請をサポートしてくれる業者は、ほぼありません。
ここに落とし穴がある。メンタル不調で退職する場合、辞め方と順番しだいで、退職後に受け取れるお金が数十万〜数百万円変わることがあります。そのカギを握るのが、医師の診断書です。
退職代行に3万円払って辞められた。でも、そのあとの生活費はどうなるのか。この問いに対する答えが、次に解説する3つの理由に詰まっています。
診断書を先に取るべき3つの理由
理由①:傷病手当金の受給条件を満たせる
傷病手当金とは、健康保険に加入している人が病気やケガで働けなくなったとき、最長1年6ヶ月にわたって給与の約3分の2を受け取れる制度。うつ病や適応障害といった精神疾患も対象です。
受給にはいくつか条件がありますが、中でも重要なのが「医師による労務不能の証明」——つまり診断書。
退職代行だけで辞めてしまうと、この証明が手元にない。退職後に慌てて心療内科を受診しても、「在職中に傷病手当金の受給を開始していた」という継続要件を満たせない可能性があります。結果として、申請が通らないリスクが出てくる。
数字で見てみてください。月給25万円の場合、傷病手当金は月に約16万6,000円。1年6ヶ月の満額で約300万円になります。退職代行の費用3万円を節約したつもりが、300万円を取り逃がす——これは極端な話ではなく、知らなかったせいで実際に起きていることです。
傷病手当金の受給条件と申請手順の詳細は、傷病手当金の申請方法まとめに整理してあります。
理由②:退職代行業者が教えてくれない「最適な順序」
退職代行のサイトには、ほとんど書かれていない情報がある。退職の「順序」の話。
経済的に最も有利な流れは、以下の4ステップです。
ステップ1:心療内科を受診し、診断書を取得する
ステップ2:診断書を会社に提出して休職する(=傷病手当金の受給開始)
ステップ3:休職期間中に退職の意思を固める
ステップ4:必要に応じて退職代行を利用する
この順番であれば、退職前に傷病手当金の受給が始まっているため、退職後も継続して受け取れる可能性が高くなります。
逆に、診断書なしでいきなり退職代行を使うと、「在職中に受給を開始していた」という条件を満たせないまま辞めることになる。あとから巻き戻すのは、かなり難しい。
「退職代行を使うな」ではなく、「使う前に1ステップ挟む」だけの話です。オンライン心療内科であれば、最短で当日〜数日以内に受診できます。診断書の取得手順はこちらの記事にまとめてあるので、確認してみてください。
理由③:即日退職の法的根拠が強くなる
民法627条は、退職の申し出から2週間で雇用契約が終了すると定めている。一方、民法628条には「やむを得ない事由」があれば即日退職が認められるという規定がある。
「適応障害により就労困難」と記載された診断書は、この「やむを得ない事由」の有力な証拠になります。会社が「引き継ぎが終わるまで出社しろ」と主張しても、診断書があれば法的に反論しやすい。
退職代行だけでも即日退職が成立するケースはある。ただし、会社が争う姿勢を見せたとき、手元に診断書があるかないかで交渉力がまるで違ってきます。退職代行と診断書は「どちらか」ではなく、「両方あるほうが強い」という関係です。
パワハラが退職理由に絡むケースでは、手順がさらに重要になります。詳しくはパワハラで辞めたい時の退職手順を確認してください。
費用と所要時間
| 項目 | 費用の目安 | 所要時間 |
|---|---|---|
| 心療内科の初診(オンライン) | 3,000〜5,000円 | 15〜30分 |
| 診断書の発行 | 2,000〜5,000円 | 当日〜郵送で3〜7日 |
| 退職代行(労働組合型) | 20,000〜30,000円 | 依頼当日〜翌日 |
| 退職代行(弁護士型) | 50,000〜100,000円 | 依頼当日〜翌日 |
診断書の取得費用は、初診料と発行料を合わせて5,000〜10,000円ほど。退職代行費用の3分の1以下で収まることが多い。
この初期投資で、月給の約3分の2×最長1年6ヶ月分の傷病手当金を確保できる可能性がある。費用対効果で考えれば、先に診断書を取っておかない理由がないと思います。
オンライン診療なら、予約から受診まで最短で当日。診断書の郵送を含めても1週間程度。退職代行を申し込む前の「数日間」で対応できます。
費用の内訳や、対面とオンラインの比較は診断書のもらい方まとめを参照してください。退職代行サービス各社の料金比較はこちらの記事にまとめています。
退職代行のフォームで指が止まった夜
ここからは、個人的な話を書く。
深夜1時。閉め作業を終えて、駐車場の車の中でスマホを開いた。「退職代行 即日」。何度目かわからない検索。
飲食店の店長を8年やってきた。人手不足で休みは月に4日。朝9時に出勤して、閉店後の片付けが終わるのは深夜。家に帰れば、妻と3歳の息子はとっくに寝ている。寝顔だけ見て、自分も倒れるように眠る。そんな日が続いていた。
ある朝、ベッドから起き上がれなくなった。身体が動かないわけじゃない。足が、床につかない。妻が「大丈夫?」と声をかけてきたとき、なぜか涙が出た。38歳が朝から泣いている。情けなかった。
退職代行のフォームに名前まで入力して、送信ボタンの上で指が止まった。3万円。払えなくはない。でもそのあと、どうする。貯金は60万円。妻と子どもを抱えて、収入ゼロの生活が始まる。
そのとき、画面の端に「傷病手当金」の文字が目に入った。
オンラインで心療内科を予約したのは3日後。スマホで5分もかからなかった。診察は15分ほど。画面越しに「朝、起き上がれなくなったんです」と言った瞬間、自分でも驚くほど声が震えた。
診断書が届いたのは1週間後。会社に提出して、まず休職した。退職代行は——結局、使った。でも、順番を変えたことで傷病手当金の申請ができた。月に約15万円。
妻に「しばらくは大丈夫だから」と言えた夜。あのフォームにそのまま名前を送信しなくてよかったと、心の底から思った。
※これは筆者個人の体験であり、傷病手当金の受給可否は個人の状況により異なります。
まとめ
退職代行は、辞める手段としては有効なサービスだと思う。自分も結局使った。否定するつもりはない。
ただ、順番を間違えると、退職後に受け取れるはずだったお金を取り逃がすことがある。診断書を1枚取るだけで、その先の選択肢が変わる。
オンラインなら、今日予約して数日で届く。退職代行のフォームを開く前に、もうひとつだけ別の画面を開いてみてほしい。
※この記事は2026年2月時点の情報に基づく個人の体験・見解であり、法的・医学的アドバイスではありません。
制度の詳細は厚生労働省・協会けんぽ・ハローワークの公式情報をご確認ください。
心身に不調を感じている方は、必ず医療機関にご相談ください。

