ハローワークの帰り道、駅のベンチに座ったまま動けなくなった。
退職して3週間。求職活動を始めたものの、面接どころか外出すること自体がしんどくなっていた。失業手当の認定日にハローワークへ行くのがやっとで、求人票を眺める気力もない。
この記事では、求職活動中に病気やケガで15日以上動けなくなったときに使える「雇用保険の傷病手当」について、受給条件・ハローワークでの申請手順・支給額の計算方法をまとめました。「傷病手当金」との違いも整理しています。公式LINEでも制度まわりの情報を配信しているので、あわせてどうぞ。
雇用保険の傷病手当とは
雇用保険の傷病手当は、失業手当(基本手当)を受給できる人が、病気やケガのために15日以上連続して求職活動ができなくなった場合に支給される給付金です。申請先はハローワーク。
支給額は基本手当の日額と同額。つまり、失業手当として受け取るはずだった金額が、求職活動ができない日数分だけ支払われる仕組みになっています。
よく混同されるのが、健康保険の「傷病手当金」。名前は似ているけれど、管轄も対象も金額もまったく異なる制度です。
| 雇用保険の傷病手当 | 傷病手当金 | |
|---|---|---|
| 管轄 | 雇用保険(ハローワーク) | 健康保険(健保組合・協会けんぽ) |
| 対象 | 退職後、求職活動中の人 | 在職中〜退職後の人 |
| 金額 | 基本手当日額と同額 | 給与の約3分の2 |
| 期間 | 所定給付日数の残日数が上限 | 最長1年6ヶ月 |
| 申請先 | ハローワーク | 健康保険組合 |
傷病手当金の申請方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
受給条件チェックリスト
以下のすべてに当てはまる場合、雇用保険の傷病手当を申請できます。
- ハローワークで求職の申し込みをしている(受給資格の決定済み)
- 病気またはケガで15日以上連続して求職活動ができない
- 基本手当の所定給付日数が残っている
- 健康保険の傷病手当金を同時に受給していない
注意したいのが、傷病の日数による扱いの違いです。
14日以内の傷病であれば「傷病手当」の申請は不要。次の認定日にハローワークへ行けば、基本手当としてそのまま処理してもらえます。
一方、30日以上にわたって求職活動ができない場合は「受給期間の延長」という選択肢もある。延長すれば、体調が回復してから改めて基本手当を受給できるため、給付日数を温存できます。どちらが有利かは回復の見通しによって変わるので、ハローワークの窓口で相談するのが確実です。
失業手当の受給開始時期について詳しく知りたい場合は、こちらの記事も参考になります。
申請の手順(Step 1〜Step 5)
Step 1〜Step 5で申請が完結します。
Step 1:ハローワークに傷病の届出をする
求職活動ができなくなった時点で、まずハローワークに連絡します。電話でOK。「病気(またはケガ)で求職活動ができなくなった」と伝えれば、傷病手当の申請方法を案内してもらえます。
届出は早いほうがいい。届出が遅れると、支給対象となる日数が減る可能性がある。
正直に書くと、この電話がいちばんしんどかった。受話器を持ったまま、しばらく声が出なかった。
Step 2:医師の証明を受ける
「傷病手当支給申請書」の中に、医師が記入する証明欄があります。傷病名と就労不能の期間を記載してもらう必要がある。
すでに心療内科に通院中であれば、次回の診察時にお願いすればOK。まだ受診していない場合は、まず医療機関にかかるところからです。オンライン診療でも証明を記入してもらえるケースがある。
診断書・証明書のもらい方についてはこちらの記事にまとめてあります。
医師の証明にかかる費用は医療機関によって異なりますが、目安は1,500〜3,000円程度。初診料を含めると、3,000〜5,000円ほどを見込んでおくと安心です。
Step 3:傷病手当支給申請書に記入する
ハローワークから受け取った(または郵送された)申請書に必要事項を記入します。主な記入項目は以下のとおり。
- 氏名・住所・電話番号
- 傷病名
- 就労不能の期間(○月○日〜○月○日)
- 医師の証明欄(Step 2で記入済み)
申請書はA4サイズで1枚。記入量はそこまで多くありません。ただし、「就労不能の期間」は医師の証明と一致させること。ここがずれると差し戻しになります。
Step 4:ハローワークに申請書を提出する
記入済みの申請書をハローワークに提出します。窓口への持参が基本ですが、管轄のハローワークによっては郵送でも受け付けてもらえる場合がある。
体調が悪くて窓口に行けない場合は、まず電話で郵送の可否を確認してみてください。代理人による提出が認められるケースもあります。
Step 5:支給決定・振込を待つ
申請後、ハローワークで審査が行われ、支給が決定すると指定口座に振り込まれます。振込までの目安はおおむね1〜3週間。基本手当の認定日サイクルとの兼ね合いで、タイミングによって前後することもある。
支給額の計算はシンプルです。
基本手当日額 × 就労不能日数 = 支給額
たとえば基本手当日額が5,000円で、30日間求職活動ができなかった場合、5,000円 × 30日 = 150,000円。基本手当日額がわからない場合は、ハローワークで交付された「雇用保険受給資格者証」に記載されています。
よくある失敗と対処法
正直に書く。私はこの制度を、しばらく知らなかった。
退職後、ハローワークで求職手続きをして、失業手当をもらいながら次の仕事を探すつもりだった。でも3週間目の朝、身体が起き上がらなかった。目は覚めているのに、布団から出られない。天井のシミを数えていたら、昼になっていた。
そのまま何もしないまま2週間が過ぎた。認定日にハローワークへ行けなかったから、もう失業手当は打ち切りだと思い込んでいた。
知人に言われて、ようやくハローワークに電話した。そこで初めて「傷病手当」という制度を教えてもらった。
私の経験もふまえて、よくある失敗を3つ挙げます。
1. 届出の遅れ
傷病手当は、届出をした日以降が支給対象になります。「もう少し様子を見よう」と先延ばしにすると、本来もらえたはずの日数分を失う。体調が悪くなったら、とにかく早めにハローワークへ電話すること。
2. 医師の証明期間と申請期間のずれ
医師に「1月10日〜2月10日まで就労不能」と書いてもらったのに、申請書には「1月15日〜2月15日」と記入してしまった——私の実際のミスです。差し戻されて、医師の証明をもらい直すまでに10日かかった。申請書を書く前に、医師の証明欄の日付を必ず確認してください。
3.「傷病手当金」との混同
退職後に国保に切り替えた場合、健康保険の傷病手当金は原則として対象外です。「傷病手当金をもらえると思って健保に連絡したら対象外と言われた」というケースは少なくない。雇用保険の傷病手当はハローワークが窓口。申請先を間違えないようにしましょう。
業者に頼む場合との費用比較
退職後のお金まわりの手続きを一括で代行するサポート業者があります。傷病手当金の申請サポートがメインで、料金は成功報酬型で数万〜数十万円が相場。
ただ、雇用保険の傷病手当に関しては、ハローワークの窓口で完結する手続きです。申請書は1枚、記入量も少なく、窓口で書き方を教えてもらえる。
| 自分で申請 | サポート業者に依頼 | |
|---|---|---|
| 費用 | 0円(医師の証明書代1,500〜3,000円のみ) | 数万〜数十万円 |
| 手間 | 電話連絡 + 申請書1枚 + 医師の証明 | ほぼお任せ |
| 所要時間 | 3〜7日(書類の準備〜提出) | 業者とのやり取りに1〜2週間 |
| 難易度 | 低め(窓口で案内あり) | — |
業者に頼む価値があるのは、健康保険の傷病手当金の申請や、受給期間の延長判断を含めた全体の設計が必要なとき。雇用保険の傷病手当だけであれば、自分で十分申請できます。
傷病手当金と失業保険のどちらを先に受けるべきか迷っている場合は、こちらの記事も参考にしてみてください。自分で申請する方法と業者に依頼する場合の比較はこちらにもまとめてある。
まとめ
雇用保険の傷病手当は、求職活動中に身体が止まってしまった人のためのセーフティネット。申請先はハローワーク、金額は基本手当日額と同額、手続きは申請書1枚と医師の証明で完結する。
私の場合、ハローワークへの電話1本が最大のハードルだった。制度を知らないまま2週間を無駄にした。でも、知ってからの申請は拍子抜けするくらいあっさり終わった。
知っているかどうか。動けるかどうか。その小さな差が、もらえるお金を変える。
※この記事は2026年2月時点の情報に基づく個人の体験・見解であり、法的・医学的アドバイスではありません。
制度の詳細は厚生労働省・協会けんぽ・ハローワークの公式情報をご確認ください。
心身に不調を感じている方は、必ず医療機関にご相談ください。

