上司に詰められた会議のあと、自席に戻って資料をめくる手が震えていた。隣の同僚が声をかけてくれたけど、何を言われたのか覚えていない。
パワハラで休職を考えているなら、この記事が役に立つと思う。心療内科の受診から診断書の取得、人事部への伝え方、傷病手当金の申請まで——一連の手順をタイムライン形式でまとめた。公式LINEでも制度まわりの情報を配信しているので、あわせてどうぞ。
パワハラ休職の制度の概要
パワハラを原因とする休職は、法律上は「私傷病休職」に分類されることが多い。会社の就業規則に休職制度があれば、医師の診断書を提出して申し出ることで休職に入れる。
ここで大事なポイントがひとつ。「パワハラの認定」と「休職」は別の手続きだということ。パワハラが原因かどうかの公式な認定——たとえば労災認定——を待つ必要はない。医師から「適応障害により休職が必要」といった診断書が出れば、休職自体は可能になる。
休職中の収入は、健康保険の傷病手当金でカバーできる。支給額は給与の約3分の2。支給期間は最長1年6ヶ月。パワハラの証拠保全や労災申請は、休職に入ってから進めても間に合う。まずは心身を休めることが最優先。
休職に必要な条件チェックリスト
傷病手当金の受給には、以下の4つの条件を満たす必要がある。
- 健康保険(社会保険)の被保険者である
- 医師から「労務不能」の診断を受けている
- 連続する3日間の待期期間を含め、4日以上仕事を休んでいる
- 休んでいる期間について、給与の支払いがない(または減額されている)
就業規則に休職制度の記載がない会社もあるが、診断書を提出すれば実質的に「休ませざるを得ない」ケースがほとんど。もし会社が休職を拒否してきた場合、労働基準監督署の総合労働相談コーナーに相談できる。パワハラが原因なら、のちに労災認定を受けて「休業補償給付」へ切り替わる可能性もある。ただ、労災の認定には時間がかかるため、まずは傷病手当金で生活を安定させるのが現実的な判断になる。
パワハラ休職の具体的な手順
受診から傷病手当金の入金まで、5つのステップで整理する。
Step 1:心療内科を受診する(Day 1〜3)
パワハラで心身に不調が出ているなら、まず心療内科か精神科を受診する。初診料の目安は3割負担で2,000〜5,000円。オンライン診療なら予約から受診まで自宅で完結するクリニックもあり、電話すら必要ない。
パワハラによる診断書の取り方はパワハラで適応障害の診断書をもらう方法に詳しくまとめている。
問診では「いつ頃からつらいか」「どんな症状があるか」を聞かれる。パワハラの詳細を完璧に説明しなくても大丈夫。「上司との関係で体調を崩した」程度で十分伝わる。
Step 2:診断書を取得する(Day 3〜10)
「適応障害」「抑うつ状態」などの診断が出れば、その場で診断書の発行を依頼できる。費用は3,000〜5,000円程度。即日発行のクリニックもあれば、郵送で3〜7日かかる場合もある。
診断書には「○ヶ月の休職を要する」と期間を明記してもらうこと。1〜3ヶ月が一般的で、状態に応じて延長できる。
封筒を受け取ったとき、中身を確認するまで少し時間がかかった。開けたら「本当に休職する」が始まるような気がして。
Step 3:人事部に休職を申し出る(Day 10〜14)
診断書が手に入ったら、人事部に連絡する。直属の上司ではない。パワハラの加害者が上司である場合、その人を経由する必要はまったくない。
メールで連絡する場合の文例を載せておく。
お疲れさまです。○○部の△△です。体調不良により通院中の医師から休職の指示を受けました。診断書を添付いたしますので、休職に必要な手続きについてご教示いただけますでしょうか。
電話ではなくメールを使う理由は、送信日時と内容が記録として残るから。「言った・言わない」を防げる。この記録が、あとで必要になることもある。
人事部から就業規則に基づく案内——休職届の提出方法、休職中の社会保険料の支払い方法など——が届くので、それに従えばいい。
Step 4:傷病手当金を申請する(休職開始後)
休職に入ったら、傷病手当金の申請に進む。支給額は標準報酬日額の3分の2。月給25万円なら月約16万円が目安になる。
申請書は加入している健康保険組合のサイトからダウンロードできる。被保険者記入欄・事業主記入欄・医師記入欄の3つを揃えて郵送する。記入方法の詳細は傷病手当金の申請方法を参照してほしい。
申請から初回の振込までは1〜2ヶ月かかるのが一般的。このタイムラグに備えて、最低1ヶ月分の生活費は確保しておきたい。
Step 5:休職中にパワハラの証拠を保全する
休職に入ったら、在職中に集めたパワハラの記録を整理しておく。録音データ、メール、LINEのスクリーンショット、日記——手元にあるものを時系列で並べる。
退職後に社内メールのアカウントが停止される可能性がある。休職中のうちに、必要なメールの転送やスクリーンショットの保存は済ませたい。具体的な証拠の種類や残し方はパワハラの証拠の集め方にまとめている。
証拠がなくても休職自体はできる。ただし、のちに労災申請や損害賠償を検討するなら、このタイミングでの保全が効いてくる。
受診から入金までのタイムライン
| 段階 | やること | 所要日数の目安 |
|---|---|---|
| Day 1〜3 | 心療内科を受診する | 予約〜受診で1〜3日 |
| Day 3〜10 | 診断書を取得する | 即日〜郵送7日 |
| Day 10〜14 | 人事部に休職を申し出る | メール送信後、2〜5日で手続き完了 |
| 休職開始後 | 傷病手当金を申請する | 申請〜初回振込まで1〜2ヶ月 |
| 休職期間中 | パワハラの証拠を保全する | 随時 |
よくある失敗と対処法
私のケースで言えば、一番の失敗は「我慢しすぎた」ことだった。
食品メーカーの営業を3年。上司の叱責は日常茶飯事で、会議室に呼ばれて1時間以上詰められることもあった。「営業なんてどこもこう」と自分に言い聞かせ続けていたけど、ある朝、玄関で靴を履いたまま20分間動けなくなった。妻が心配して覗きに来て、自分でも驚いたことに、泣きながら「もう行けない」と口にしていた。あれが限界だったんだと思う。
受診して診断書は取れた。でもそこから人事部にメールを送るまでに、さらに1週間かかった。「パワハラで休みたいと思われるのか」「大げさだと言われるんじゃないか」——そんなことが頭を回って、指が止まる。結局メールには「体調不良」とだけ書いた。パワハラには一切触れなかった。振り返ると、休職に入ること自体が最優先で、理由の詳細はあとからでよかった。
もうひとつ。傷病手当金の申請書で、医師記入欄を自分で埋めてしまおうとしたことがある。当然ダメで、クリニックに書き直しを依頼して1週間ロスした。焦っているときほど、手順を飛ばしがちになる。
業者に頼む場合との費用比較
| 項目 | 自分で手続き | サポート業者を利用 |
|---|---|---|
| 初診料 | 2,000〜5,000円 | 2,000〜5,000円 |
| 診断書 | 3,000〜5,000円 | 3,000〜5,000円 |
| 傷病手当金の申請 | 0円(自分で記入・郵送) | 0円(申請自体は自分で行う) |
| サポート費用 | 0円 | 10〜50万円(成功報酬型が多い) |
| 合計目安 | 5,000〜10,000円程度 | 15〜55万円程度 |
サポート業者は、手続きの案内やスケジュール管理をしてくれる。ただ、傷病手当金の申請手続き自体は、本来自分でもできるもの。必要な知識を押さえて自力で進めれば、費用は受診料と診断書代だけで済む。
まとめ
パワハラで休職するまでの手順は、分解すると5つのステップ。受診して、診断書をもらって、人事部に出して、傷病手当金を申請して、証拠を保全する。
一つひとつは、そこまで難しくない。ただ、心身が限界のときに「調べて、動いて、書類を揃える」のは、想像以上にしんどかった。全部を一度にやろうとしなくていい。今日できるのが病院の予約だけなら、それでいい。手順を知っているだけで、少し先が見える。
※この記事は2026年2月時点の情報に基づく個人の体験・見解であり、法的・医学的アドバイスではありません。
制度の詳細は厚生労働省・協会けんぽ・ハローワークの公式情報をご確認ください。
心身に不調を感じている方は、必ず医療機関にご相談ください。

