産後の退職と傷病手当金。使える4つの制度と金額を解説

制度解説・基礎知識

産後に退職を考えたとき、最初にぶつかるのがお金の壁だと思う。産後退職で使える公的制度は、傷病手当金・出産手当金・育児休業給付金・失業保険の主に4つ。この記事では、各制度の受給条件・金額・受給タイミングを整理表つきでまとめた。特定理由離職者の認定条件や、シングルマザーが追加で使える制度にも触れている。公式LINEでも制度まわりの情報を配信しているので、あわせてどうぞ。

産後退職で使える4つのお金の制度

産後に退職する場合、使える可能性がある制度は大きく4つ。

傷病手当金

健康保険から支給される制度。産後うつや適応障害などで医師が「労務不能」と判断した場合に、給与のおよそ3分の2が最長1年6ヶ月間もらえる。退職後も一定の条件を満たせば継続して受給できる。産後うつで退職する場合、この制度が収入面の柱になることが多い。

出産手当金

同じく健康保険から。出産日以前42日〜出産日後56日のあいだ、給与のおよそ3分の2が支給される。産前産後の休業期間をカバーする制度で、退職後も条件次第で受け取れる。

育児休業給付金

こちらは雇用保険からの支給。育休開始から180日間は給与の67%、それ以降は50%。ただし、退職した時点で打ち切りになる。復職を前提とした制度なので、退職を決めた段階で他の制度への切り替えを考える必要がある。

失業保険(基本手当)

雇用保険に一定期間加入していれば、ハローワークで申請できる。自己都合退職の場合は2ヶ月の給付制限つき。ただし「特定理由離職者」に認定されれば、制限なしで受給が始まる。

管轄も受給期間もバラバラな4つの制度。順番やタイミングを間違えると、受け取れるはずのお金を逃す。次のセクションで条件を整理していく。

各制度の受給条件

制度ごとの受給条件を一覧にした。

制度 主な受給条件 退職後の受給
傷病手当金 健康保険に継続1年以上加入/医師が「労務不能」と判断 退職日に労務不能であれば継続可
出産手当金 健康保険に継続1年以上加入/出産日以前42日以内に退職 退職日に出勤していなければ可
育児休業給付金 雇用保険に12ヶ月以上加入/育休取得中 退職と同時に終了
失業保険 雇用保険に12ヶ月以上加入/働く意思と能力あり 退職後にハローワークで申請

いくつか補足する。

傷病手当金の継続受給

退職後も傷病手当金をもらうには、退職日までに健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること。そして退職日に労務不能の状態であること。ここで見落としやすいのが「退職日の出勤」で、最終日に挨拶だけのつもりで出社すると、継続受給の権利を失う。本当に注意が必要。

育児休業給付金

退職と同時に終了する。復職が前提の制度なので、退職を決めたら傷病手当金や失業保険への切り替えを早めに検討しておきたい。

失業保険と受給期間の延長

産後うつで「働ける状態ではない」場合、すぐに失業保険は受け取れない。ただし受給期間の延長手続きをしておけば、最大4年間、受給開始を先送りにできる。体調が回復してから申請する流れになる。

特定理由離職者の認定

産後うつや体調不良を理由に退職した場合、「特定理由離職者」として認定される可能性がある。認定されると自己都合退職でも2ヶ月の給付制限が免除され、給付日数が優遇されるケースも。認定には医師の診断書とハローワークでの申告が必要になる。具体的な手続きは特定理由離職者の認定と申請手順にまとめてある。

金額と受給期間のシミュレーション

月給別に、各制度のおおよその支給額を試算した。

月給(税込) 傷病手当金(月額) 出産手当金(98日間の総額) 育休給付金(月額・最初180日) 失業保険(日額目安)
20万円 約13.3万円 約43万円 約13.4万円 約4,800円
25万円 約16.7万円 約54万円 約16.8万円 約5,600円
30万円 約20.0万円 約65万円 約20.1万円 約6,300円

※標準報酬月額や加入期間により変動するため、あくまで目安として見てほしい。

次に、産前産後の時系列で「いつ・どの制度が使えるか」を整理する。

時期 使える制度 備考
産前42日〜出産日 出産手当金 産休中の収入保障
出産翌日〜産後56日 出産手当金 産後休業期間
産後57日〜育休終了 育児休業給付金 退職すると打ち切り
退職後(労務不能) 傷病手当金 出産手当金との併給は不可
回復後 失業保険 受給期間の延長手続きが必要

産後うつで退職するケースの典型的な流れは、出産手当金→育児休業給付金→(退職)→傷病手当金→(回復後)失業保険という順番。ただし傷病手当金と出産手当金は同じ期間に併給できない。出産手当金の支給期間が終わってから傷病手当金に切り替わる形になる。

たとえば月給20万円のケースで、出産手当金(98日分で約43万円)+傷病手当金(月額約13.3万円を1年間で約160万円)+失業保険(日額約4,800円を90日で約43万円)と並べると、合計は約246万円。制度をきちんと使えるかどうかで、退職後の生活は大きく変わる。

見落としやすい3つの注意点

1. 退職日に出勤しない

傷病手当金・出産手当金ともに、退職日に出勤すると退職後の受給資格を失う。有給消化中であっても、退職日当日を「出勤」扱いにしないよう、会社の人事に事前に確認しておくこと。

2. 傷病手当金と出産手当金の併給調整

同じ期間に両方の受給要件を満たした場合、出産手当金が優先される。傷病手当金は出産手当金の支給が終わってから開始する形。「両方同時にもらえる」のではなく「順番にもらう」と覚えておくとわかりやすい。

3. シングルマザーが追加で使える制度

ひとり親家庭には、上の4制度に加えて使えるものがある。

  • 児童扶養手当:子ども1人で月額最大約4.5万円(所得制限あり・年度により改定)
  • ひとり親家庭医療費助成:自治体により異なるが、医療費の自己負担が軽減される
  • 母子父子寡婦福祉資金:無利子または低利子の貸付制度

いずれもお住まいの市区町村の窓口で申請する。退職後は国民健康保険への切り替えも発生するので、まとめて相談しておくと手続きの漏れが減る。

次にやること

状況に合わせて、以下の記事を参考にしてほしい。

  • 退職後に傷病手当金を申請したい → 傷病手当金を退職後にもらう方法と条件
  • 復職か退職かで迷っている → 産後うつで仕事に復帰できないときの選択肢
  • 特定理由離職者の認定を受けたい → 特定理由離職者の認定と申請の手順

まとめ

産後の退職は、制度を知っているかどうかで手元に残るお金が大きく変わる。

私は子どもが3ヶ月のとき、深夜の授乳のあいだにスマホで制度を調べ始めた。最初は4つの制度の区別がつかなくて、同じページを何度も読み返した。片手で子どもを抱えて、片手でスクロールする夜。それでも、あのとき調べたことは全部、あとから自分を助けてくれた。

使える制度は4つ。まずは自分がどの条件に当てはまるか、確認するところから始めてみてほしい。

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※この記事は2026年2月時点の情報に基づく個人の体験・見解であり、法的・医学的アドバイスではありません。
制度の詳細は厚生労働省・協会けんぽ・ハローワークの公式情報をご確認ください。
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