傷病手当金と障害年金の違い|併用はできるか解説

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傷病手当金の残り月数を、カレンダーに書き込んでいた。

あと4ヶ月。物流会社の事務職を適応障害で退職して、1年と2ヶ月。傷病手当金のおかげで家賃6万円と光熱費はなんとか回っていたけど、この制度は最長1年6ヶ月で終わる。その先の収入が、見えない。

スマホで「傷病手当金 終了後」と検索した夜に、「障害年金」という制度を知った。傷病手当金と何が違うのか。両方もらえるのか。切り替えるにはどうすればいいのか。

この記事では、傷病手当金と障害年金の違いを比較表つきで整理し、併用時の調整計算や移行の最適なタイミングまで解説しています。公式LINEでも制度まわりの情報を配信しているので、あわせてどうぞ。

傷病手当金と障害年金の制度概要

傷病手当金と障害年金は、どちらも病気やケガで働けなくなったときの収入を支える制度。ただし、運営元も仕組みも異なります。

傷病手当金は、健康保険(協会けんぽや健保組合)の給付です。会社員が業務外の病気・ケガで仕事を休んだとき、給与のおよそ3分の2が支給される仕組み。期間は支給開始日から通算1年6ヶ月。「休んでいる間の生活費を、一時的にカバーする」ための制度になります。

障害年金は、国民年金・厚生年金の給付。病気やケガによって一定の障害状態と認定された場合に、年金として受け取れます。障害基礎年金(1級・2級)と障害厚生年金(1〜3級)があり、支給期間に上限はない。障害が続く限り受給でき、有期認定の場合は1〜5年ごとに更新審査が行われます。

ざっくり言えば、傷病手当金は「期間限定の休業補償」。障害年金は「長期的な生活保障」。この違いが、併用や移行を考えるうえで重要になってきます。

支給条件・金額・期間の比較

二つの制度の違いを、テーブルで整理します。

項目 傷病手当金 障害年金
根拠法 健康保険法 国民年金法・厚生年金保険法
支給元 健康保険(協会けんぽ等) 日本年金機構
対象者 健康保険の被保険者(会社員等) 初診日に年金制度に加入していた人
主な条件 業務外の傷病で労務不能+連続3日の待期完成 初診日要件+保険料納付要件+障害等級該当
金額の目安 標準報酬月額の約2/3(日額計算) 障害基礎年金2級:約81万円/年、1級:約102万円/年+障害厚生年金(報酬比例)
支給期間 支給開始日から通算1年6ヶ月 障害が続く限り(更新審査あり)
退職後の受給 条件を満たせば継続受給可 退職の有無に関係なく受給可
申請先 加入する健康保険組合 年金事務所または市区町村窓口

金額の具体例を見てみます。月給25万円の会社員の場合、傷病手当金は月額約16万7,000円。一方、障害厚生年金2級+障害基礎年金2級を受給すると、加入期間や報酬額にもよるものの月額10〜15万円程度になるケースが多い。

傷病手当金のほうが月々の金額は高い傾向にあります。ただし1年6ヶ月で打ち切り。障害年金は金額が低くても長期的に受給できる点が強みです。どちらが「得」かではなく、時期と症状の状態によって使い分ける——それが現実的な考え方になります。

傷病手当金の受給条件について詳しくは傷病手当金の条件をわかりやすく解説を参照してください。

傷病手当金と障害年金のメリット・デメリット

それぞれの制度の強みと弱みを整理します。

傷病手当金のメリット

    • 給与の約3分の2が支給され、金額が比較的高い
    • 会社員であれば申請しやすく、手続きもシンプル

傷病手当金のデメリット

    • 支給期間は最長1年6ヶ月。期間限定の制度であり、終了後の収入は別途確保する必要がある

障害年金のメリット

    • 支給期間に上限がなく、障害が続く限り長期的に受給できる
    • 退職の有無にかかわらず受給可能で、働いていても条件を満たせば受け取れる

障害年金のデメリット

    • 審査に3〜4ヶ月かかり、すぐには受け取れない
    • 月額は傷病手当金より低くなる傾向がある
    • 診断書や申立書など、申請書類の準備に手間がかかる

併用時のデメリット:両方満額にはならない

同一の傷病で傷病手当金と障害厚生年金を同時に受給する場合、金額は調整されます。障害年金の日額(年額÷360)が傷病手当金の日額以上なら、傷病手当金は支給されない。障害年金の日額のほうが低い場合は、差額だけが傷病手当金として支給される仕組みです。

【例】月給25万円・障害厚生年金2級+障害基礎年金2級の場合

傷病手当金の日額:25万円÷30×2/3 = 約5,556円
障害年金の年額を仮に140万円とした場合の日額:140万円÷360 = 約3,889円
差額:5,556円 − 3,889円 = 1,667円

この場合、傷病手当金として日額1,667円(月額約5万円)が支給される。障害年金と合わせた月の手取りは、傷病手当金を単独で受給していたときとほぼ同額になる計算です。

つまり、併用期間中の総額は大きく変わらない。ただし、傷病手当金が終了した後も障害年金は続きます。長い目で見れば、障害年金への移行準備を早めに進めておくことが、収入の空白を防ぐカギになる。

自分で申請する場合と社労士に依頼する場合の比較

障害年金の申請には、自分で手続きを進める方法と、社会保険労務士(社労士)に依頼する方法があります。それぞれの進め方と費用感を比較します。

自分で申請する場合

移行で最も注意すべきは、「申請から支給決定までのタイムラグ」。障害年金の審査には通常3〜4ヶ月かかります。傷病手当金が切れてから動き出すと、数ヶ月の無収入期間が生まれてしまう。

以下が、自分で進める場合の移行準備スケジュールです。

時期(傷病手当金終了を基準) やること
6ヶ月前 障害年金の受給要件を確認。初診日・保険料納付要件を年金事務所で照会する
5ヶ月前 主治医に障害年金用の診断書(様式第120号の4)の作成を相談
4ヶ月前 「病歴・就労状況等申立書」の下書きを開始する
3ヶ月前 必要書類を揃え、年金事務所に事前相談
2ヶ月前 申請書類一式を提出
終了後〜 審査結果を待つ(3〜4ヶ月)。認定されれば請求月の翌月分から支給

ポイントは、障害認定日(初診日から1年6ヶ月後)を過ぎていれば、申請自体はいつでもできるという点です。傷病手当金の受給期間と障害認定日はほぼ同時期になることが多い。だからこそ、傷病手当金を受け始めた段階で障害年金への移行も視野に入れておくのが理想的です。

審査期間中に傷病手当金が終了した場合でも、障害年金が認定されれば請求月の翌月分から遡って支給されます。ただし、振込までの生活費は自分で備える必要がある。貯蓄や住居確保給付金などの活用も検討しておくと安心です。

社労士に依頼する場合

障害年金を専門とする社労士に依頼すると、診断書の依頼方法のアドバイスから病歴・就労状況等申立書の作成代行、年金事務所への提出まで、手続き全般をサポートしてもらえます。費用の目安は着手金と成功報酬を合わせて10〜20万円程度。自分で書類を揃える負担が大きく減るぶん、体調が不安定な時期にはありがたい選択肢です。

項目 自分で申請 社労士に依頼
費用 実費のみ(診断書代など数千円) 10〜20万円(着手金+成功報酬)
書類作成 申立書・必要書類をすべて自分で準備 申立書の作成代行・診断書の依頼方法もアドバイス
手続きの負担 年金事務所への相談・提出も自分で対応 提出手続きまで代行してもらえる
こんな人向き 費用を抑えたい・書類作成に時間を割ける人 体調が不安定・手続きに不安がある人

障害年金の受給条件については障害年金はうつ病でも申請できる?条件と金額の目安、申請手順の詳細は障害年金の申請手順|うつ病・適応障害の場合を解説でまとめています。

制度の切れ目で揺れた日々

傷病手当金の残りが4ヶ月を切った日、部屋のカレンダーに赤いマーカーで線を引いた。支給終了日。その日から先には、何も書き込めなかった。

年金事務所に電話をかけるまで、2週間かかった。受話器を取って、番号を押して、コール音を聞いて——切る。それを3回繰り返した。4回目、ようやく繋がった先で、窓口の職員は淡々と初診日の確認方法を教えてくれた。もっと早く電話すればよかった、と思った。

後日、年金事務所の窓口で書類一式を受け取った。診断書の様式、申立書の用紙、記入例のプリント。封筒の厚みに、帰りのバスの中でため息をついた。社労士に頼めば楽になるのかもしれない。スマホで調べた費用の相場は10万円以上。通帳の残高を見て、自分でやると決めた。

主治医に診断書の作成をお願いしたとき、「申立書の書き方が一番大変だと思うから、少しずつ進めてね」と言われた。実際、自分の病歴を時系列で書き出す作業は、振り返りたくない記憶を掘り返す作業でもあった。3日かけて仕上げたA4用紙5枚。手が止まるたびにコーヒーを淹れた。何杯飲んだか、覚えていない。

まとめ

傷病手当金と障害年金は、同じ「働けないときの支え」でも仕組みがまったく違う。傷病手当金は期間限定の生活補償。障害年金は長期的な保障。併用時には調整が入り、「両方満額」にはならない。

大事なのは、傷病手当金を受給しているうちに、次の選択肢を知っておくこと。制度の切れ目は、少しの準備で埋められる。

調べるだけでも、先が少し見えてくる。それだけで、カレンダーの赤い線の先に、何かを書き込めるようになる。

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※この記事は2026年2月時点の情報に基づく個人の体験・見解であり、法的・医学的アドバイスではありません。
制度の詳細は厚生労働省・協会けんぽ・ハローワークの公式情報をご確認ください。
心身に不調を感じている方は、必ず医療機関にご相談ください。

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